1940年日本万博の計画趣旨とは~星野錫『紀元二千六百年記念日本万国大博覧会をなぜ開設せねばならぬか?』(博覧会倶楽部、1935年)が入荷しました!

 先日、茨城県日立市へ買取に行かせていただきました!お家丸ごとの生前整理のご依頼でした! 昭和レトロもの、アクセサリー、洋食器、お酒、外国のコイン、古銭、書き損じはがき、切手、おもちゃ、服飾小物、絨毯、万年筆等をお譲りいただきました。ありがとうございます!
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 さて、最近こんなニュースがありました。来年夏に延期された東京オリンピック・パラリンピックの件です。ある政府関係者が毎日新聞の取材に対して、オリンピック開催にあたって観客数の削減や開閉会式などの規模を縮小する方針であり、その一方で、感染症対策として選手や大会関係者、観客らを対象に新型コロナウイルスのPCR検査を実施することも検討する旨回答したとのことです。

※政府、東京オリンピックの簡素化検討 観客数削減や開閉会式の規模縮小(毎日新聞、2020年6月4日)
https://mainichi.jp/articles/20200604/k00/00m/050/242000c

 たしかに、観客数の削減や開閉会式の規模縮小、それとあわせて感染症対策を検討するというのは、現実的選択に見えるかもしれません。しかし裏を返せば、オリンピックのような、4年に一度ということで盛大さを売りにするイベントを、開催か中止かの間でどっちつかずという姿勢を保ちながら、その間をとったような奇妙な形で開催すること、であるともいえます。そうであるならば、そのことに果たしてどのような意味があるのか、という問いかけも出てきてもよいかもしれません。

 そうしたことを考えるヒントして、1940年の幻の東京オリンピックをめぐる歴史はこれまでも注目されてきました。今回は1940年東京オリンピック返上に先立つ、1940年日本万博の計画とその中止に関してふれてみたいと思います。というのも、以下の資料を買い取らせていただいたからです。

1940日本万博の計画

 

星野錫『紀元二千六百年記念日本万国大博覧会をなぜ開設せねばならぬか?』(博覧会倶楽部、1935年)です。著者の星野錫は、日本万国博覧会協会副会長および博覧会倶楽部会長です。

 星野は国際的な博覧会の意義について次のように述べています。博覧会をお祭り騒ぎだと批判する論者に対する応答として星野は、「博覧会は寧ろお祭り騒ぎたるに存在の理由を有する」というと明言しています。ただしただのお祭り騒ぎではなくて、綿密な計画のために各方面からの知恵を結集して、それを近代科学の精粋を尽くして実現する、「充実無比のお祭り騒ぎ」でなければならないとも強調しています。「充実無比」の祭典を実現するには、国の総力を挙げての計画・運営が求められるでしょう。このような星野の主張にしたがって、現在のオリンピック延期問題を考えるならば、以下のようにいえるかもしれません。

 オリンピック開催に賛成の論者であればこそ、オリンピックそれ自体の価値に鑑みる必要がある。万全なかたちでオリンピックが開催できないならば、はっきりとその開催中止を訴えなければならない、と。事実、日中戦争が泥沼化する中で1940年日本万博は中止となりました。

 また、1940年日本万博が計画されていた1934、35年ごろというのは、日本の輸出超過に起因する貿易摩擦が激化した時期です。各国政府による日本製品に対する関税引き上げや輸入規制強化などは、この時期の日本外交が直面した難問でした。もちろん各国経済界でも日本製品排斥の運動が高まっていました。つまり、こうした経済上の対立によって国境の垣根が高くなりがちな昨今、万博でもやって心機一転しようじゃないか、というのが1940年日本万博計画の意図に含まれていたわけです。こうした内容も『紀元二千六百年記念日本万国大博覧会をなぜ開設せねばならぬか?』から読み取ることができます。むろん、1933年に国際連盟脱退を宣言した日本が、「万博をきっかけに国際協調を!」と訴えることにどれだけの説得力があったのか省みる必要はありますが。

 一方で、新型コロナウイルスの蔓延に負けずに東京オリンピックを開催する、という目論見には正当性があるでしょうか。国境の壁が厚くなっていく貿易摩擦の1930年代と違い、現在問題となっているのは、国際経済が網の目のように、かつ高速でつながっているがゆえに、ウイルス感染が拡大したという点です。そのためにもはや現在においては、東京に各国代表選手や観客を集めるという形式そのものが正当化しにくい、という事態に直面しているのではないでしょうか。

 このように見てくると、星野錫がいうように国際的な祭典は「充実無比のお祭り騒ぎ」であるべきならば、それが実現できないときはどのようにすべきか、という視点で2021年東京オリンピック開催を問い直すことの必要性を感じます。

 くまねこ堂は、こうした歴史的な資料も歓迎しております。ご自宅を整理される際はぜひご一報ください! お電話またはメールフォーム、LINEにて、お気軽にお問い合わせ下さいませ。スタッフ一同心よりお待ちしております!

小野坂


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