【第3回】「汝窯天青釉洗」、香港サザビーズにて●●億円で落札!!
こんにちは、クラニャンです。
先日香港サザビーズでは、「北宋汝窯天青釉洗」が中国陶磁器史上最高額で落札されました。
くまねこ堂ブログでは、「汝窯」の青磁ってどんなものなの?という疑問について、シリーズで考えてみたいと思います。
第2回に続きまして、今回も近年の展覧会から「汝窯」の作例を見てみましょう!
【東京国立博物館】
③「中国陶磁の技と美」 、東洋館 5室 ( 2016年3月15日 ~ 2016年5月15日)
【大阪市立東洋陶磁美術館】
④特別展「台北 國立故宮博物院―北宋汝窯青磁水仙盆」、展示室J(2016年12月10日~2017年3月26日)
③まずは再び、東京国立博物館(以下、東博)の東洋館で昨年開催された展覧会。
同展には、本シリーズ第2回でご紹介した「青磁盤」(汝窯 北宋時代・11~12世紀 東京国立博物館蔵(香取國臣・芳子氏寄贈))がまたも出品されたほか、同作と双子のようにそっくりな、薄くととのった器形の「青磁盤」(汝窯 北宋時代・11~12世紀 上海博物館蔵)が並べて展示されました。
東博所蔵品が川端康成のコレクションであったことは前回ご紹介しましたが、上海博物館のものも清朝末期の文人である呉大澂(ごだいちょう1835- 1902)の旧蔵品だったそうです。
明るく澄んだエメラルドグリーンのような東博版に対し、こちらの上海版は色調がより暗く青みを帯びており、落ち着いた風格を感じさせます。表面にのぞく貫入も黒っぽく、独特の趣を醸し出しています。
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④最後にご紹介するのが、昨冬から大阪市立東洋陶磁美術館で開催された「北宋汝窯青磁水仙盆」展。
展覧会名にも「汝窯」と銘打たれているように、「青磁水仙盆の名品を通して、歴代の皇帝たちが愛した汝窯青磁の美の真髄」(同館HPより)を紹介するという内容。企画者の気合と自信がひしひしと伝わってくる、渾身の展覧会だったと思います。
チラシで「人類史上最高のやきもの」(!)とうたわれているのはこちらの「青磁無紋水仙盆」(台北國立故宮博物院蔵)。
作品名の「無紋」とは、貫入(かんにゅう/釉薬にはいったヒビ)が一切ないということ。
シリーズ第2回で紹介した、同じ台北故宮博物院蔵の「青磁輪花碗」などは表面の貫入がおだやかなアクセントになっていましたが、本作のアピールポイントは、表面が完璧になめらかだという点です。明時代の文献は「無紋」のものを汝窯青磁の最高ランクに位置づけており、続く清朝でも、乾隆帝(1711-1799)がとりわけこの作品を愛したことが伝えられています。
また、この「水仙盆」と称される器の、北宋時代における用途は今のところ分かっていません。
清時代には犬や猫の餌入れ(!)とも考えられていたようですが、本展では「水仙の水耕栽培に使われていたのでは?」という説をもとに、現代陶芸家によるレプリカに実際に水仙の造花を活けるという展示コーナーもありました。
さて、 「汝窯」を考えるシリーズ第1~3回では、サザビーズ競売のニュースを出発点に、汝窯青磁の優品とされる4点を見て参りました。
私もこれらを見比べてあらためて実感するのは、
「汝窯青磁とひとくちに言っても、作品ごとに結構印象が違うな…」ということ。
4点について端正な造形は共通するものの、釉薬の色味や明るさ、艶感にはかなり差があります。
東洋陶磁美術館HPには、「汝窯は「天青色(てんせいしょく)」とも形容される典雅な釉色[…]を特徴とします」と説明されるものの、その言葉が指す色には広がりがあるような気がします。
ここであらためてサザビーズの落札作品を見てみましょう。
こちらは台湾の台北鴻禧美術館の旧蔵品ですが、これまで見た4点と比べていかがでしょうか?
第4回以降には、汝窯をめぐる研究史を概観しながら、その位置づけについて考えを深めていきたいと思います。
すこし時間が空くかもしれませんが、どうぞご覧ください(*^-^*)
なお、くまねこ堂では中国美術品全般(書画・掛軸・書・文人画・絵画・仏像・書道具・文房四宝・硯・墨・硯屏(けんびょう)・筆架(ひっか)・石印材(せきいんざい)・紙・水滴・やきもの・中国切手・古家具)を幅広く買取りしております。
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Byクラニャン
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