「棟方志功板畫集」を入荷致しました!
最近は不安定なお天気の時もありますが、大分ポカポカと気持ちの良い日が続くようになりましたね。
さてこの度ご紹介するのはこちら!
「棟方志功板畫集」昭和22年、細川書店
「ワだばゴッホになる」の言葉でもおなじみ、棟方志功(むなかたしこう)は1903年(明治36年)青森市生まれの板画家で、20世紀美術を代表する作家の一人です。彼の版画作品は木版画なのですが、版画を「板画」と称していました。これは「版を重ねて作品とするのではなく、板の命を彫り出すことを目的とした芸術を板画とした。」という考えから来るものです。
以前どこかの本で読んだのですが、仏師が「自分が仏様を彫っている(作っている)のではなく、木の中にいる仏様を自分が彫らせて頂いているに過ぎない」と言っていた感覚にとても良く似ているなーと思いました。
版画の世界では、1955年にサンパウロ・ビエンナーレで版画部門最高賞を受賞し、1956年のヴェネツィア ビエンナーレで日本人として初の国際版画大賞を受賞したことで、一躍「世界のムナカタ」となった事は大変良く知られています。
また、映画やドラマでも良くみられるシーンですが、極度の近眼の為、眼鏡が版木にくっつく程顔を近づけ、何かに憑りつかれたように一心不乱に物凄いスピードで彫っていく姿はあまりにも有名ですね。
この「棟方志功板畫集」は実際刷られたものと印刷との両方の図版を含みますが、文字は全て活版印刷で仕上げられており、非常に手作り感溢れる味わい深い画集となっています。
棟方ならではのユニークな表情や線が魅力的!
棟方志功の代名詞とも言える代表作「二菩薩釈迦十大弟子」は、驚くべきことに12面に及ぶ作品にも関わらず、わずか一週間で仕上げたとの事。もの凄い集中力とエネルギーの塊です。
舎利弗(しゃりほつ)
阿難陀(あなんだ)
なんとこの人、十大弟子の中で一番のイケメンで、女性に大人気だったとか。
そして!遊び紙の模様も印刷ではなく、実際刷られたものです。手が込んでるー!
この活版印刷独自のエンボスも堪りませんね!!
裏面
画集冒頭に掲載されている、棟方に大きな影響を与えた柳宗悦の言葉も大変興味深いです。
「恐らく棟方といふ個人の力以外のものが背後に控えていて、棟方に仕事をさせているのである。棟方の仕事には「作る」といふ性質より、「生れる」といふ性質の方が強い。」
柳宗悦が理想とした職人や芸術家は「何者かがそれを動かしている」ような人物でした。恐らく棟方にその理想を見出したのでしょう。
「この道より我を生かす道なし、この道をゆく(武者小路実篤)」を生涯の座右の銘とした棟方志功。
自身の信念に基づき、過酷なまでに純粋に絵に突き進んだ作品は、理屈どうこうを吹っ飛ばして見るものにパワーをガンガン与えてくれます。
余談ですが、約12年前、青森県立美術館で開催された「棟方志功展」を拝見する機会がありました。その時展示された作品群の中に、棟方の書簡が展示されていたのですが、なんというか、感覚のままに書いていくというか、間違えたらガンガン墨で傍線を引いて訂正し、とにかく書き進めていく、そして、できあがった手紙はまるで本番前の下書きのようでした。しかし、そこに彼の性格と思考のスピードを感じて、凄い面白い人だなーと思った覚えがあります。
機会がございましたら是非ご覧になって見てくださいね!
ふうき