昭和戦前・戦時期の工芸品に関する輸出の奨励やデザインの研究に関する雑誌・公的機関の報告書などが大量入荷しました~芸術と経済政策の交点

 

 先日は、品川区八潮へ出張買取にうかがいました! 万年筆、ライター、腕時計、海外紙幣・コイン、ギター、ソフビの赤ちゃん人形、世界の名著、古本(戦記)をお譲りいただきました、ありがとうございます!
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 さて、くまねこ堂に興味深い書籍、雑誌、機関の定期刊行物が入荷しました。大まかには、昭和戦前・戦時期の工芸品に関する輸出の奨励やデザインの研究に関する雑誌になります。その中には、ガリ版刷りの内部報告書と思しきものも含まれます。

デザイン 戦前の雑誌

 デザイン 戦前の雑誌

 上掲の画像の通り、かなりの量をお譲りさせていただきました。あわせて、商工省工芸指導所が発行していた『工芸ニュース』や、帝国工芸会の機関誌『帝国工芸』はある程度まとまって入荷することができました。買取のご依頼者様には感謝申し上げます。

 これらお譲りいただきました雑誌や資料については、帝国工芸会、というのが重要なキーワードに思われます。「コトバンク」によれば、帝国工芸会とは、「ドイツ工作連盟に刺激されて,1926年(大正15年~昭和元年)に結成された産業デザインの振興団体」とのことです。さらに同会は「富国強兵策に裏付けられた産業デザインの育成と輸出振興を目指し」て設立されたこと、そして活動は1943年まで継続されたことなどがふれられています。

 しかしながら、昭和初年にあって、「富国強兵」は何を意味したのでしょうか。ここから先は「コトバンク」ではわかりません。とりあえずは、工芸品と国家目標が結びつく領域とは何だろうか、との視点を手がかりにで考えてみましょう。

 まずは時代的な背景として、第一次世界大戦(1914-1918年)後の国際経済関係を確認します。この時期は思想的には経済的国際主義の時代であったといえなくもないですが、それは各国の保護貿易政策の高まりという現実とコインの表裏でもありました。なぜ保護貿易政策が求められたかというと、各国は自国通貨の価値を維持する政策の一環として、国際収支の赤字削減を進める必要があったからです。あわせて、当時のヨーロッパ諸国は失業率が高かったのですが、それゆえに国内産業を保護することは、失業対策のためもあって重視されました。

※Patricia Clavin, The Great Depression in Europre, 1929-1939, Palgrave, 2000.

 一方で各国は、輸出奨励で攻勢に出ることも模索しました。実は、その興味深い例が当時の日本なのです。もとより日本は、綿製品の輸出国としての地位を確立していました。しかしながら、国際収支の面では、綿製品輸出にはある問題がありました。それは、原料品である綿花の輸入が増大してしまうことです。そのため、増産しても原料輸入が増加するという問題を持たない分野の重要性が高まることになります。そこで、国内に原料がある陶磁器やガラス製品の輸出奨励が国家的な課題と意識されていたのです。このような構図もあって、工芸品と経済政策とが結びつくようになっていったのです。

 その上で、1929年のニューヨーク株式市場の暴落に端を発する世界大恐慌の渦中で、日本経済は大打撃を受けることになります。工芸品輸出奨励は日本経済にとってますます重要性を帯びていきました。そんな中で開かれたある講演会の記録が、今回の買取品の中にございましたので、紹介します。

支那の工芸

「支那の工芸」という、帝国工芸会と調査研究団体の啓明会との共催で行われた、1931年7月23日の講演会の記録です。開会のあいさつでは、昨今のヨーロッパにおけるエジプトやギリシャの古代工芸品がブームであることから切り出されています。それに続けて、いずれ中国ブームが来たときに備えなければならないということが強調されています。

支那の工芸

  動機はきわめて商業主義的であったとしても、1931年というのは古代工芸品つながりでの国際文化交流、ともいうべき可能性が存在していたのでしょうか。ただ、その2カ月後に満州事変が起こされてしまったは悔やまれます。未発の可能性は未発のままに終わりました。

 これ以降、工芸品をめぐる問題は、否応なく戦時経済に巻き込まれていきます。次回はそうした点と関係のある文献を買取品の中から紹介していきます。

 くまねこ堂では今回取り上げたような、歴史的価値の高い雑誌・史資料も扱っておりますし、骨董品や絵画、掛軸、アクセサリーなど幅広いお品物の買取りもしております。また、遺品整理なども行っております。お電話またはメールフォーム、LINEにて、お気軽にお問い合わせ下さいませ。

 スタッフ一同心よりお待ちしております。

小野坂

 


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