戦前日本の専売局証票~ドイツのレームツマ社製タバコ、ゲルべゾルテ(Gelbe Sorte)の空箱

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 今回は、ドイツのレームツマ社製タバコ、ゲルべゾルテ(Gelbe Sorte)の空箱を紹介していきます。

ドイツ製タバコ

 この函は、消印が重なっていて見づらいですが、「輸入製造煙草」という専売局の証票で閉じられていました。この証票自体にも「独逸レームッマ ゲルべゾルテ(プレーン)弐拾五本入 定価七拾銭」と記載されています。

専売局証票

専売局証票

 タバコにはどのようなイメージがあるでしょうか。身近な嗜好品といったところでしょうか。しかし、身近な嗜好品だからこそ、常に国家による管理が試みられてきた、という歴史も見逃せません。タバコの専売制が整備されていった理由の1つには、日露戦争(1904~1905年)の戦費調達があります。タバコ税は地租と同様、中央政府にとっては必死で徴収したい財源でした。

 そうなると、輸入タバコをどう扱うべきか、政府は知恵を絞らざるを得なくなります。1911年の日英通商条約の改訂によって関税自主権を獲得した日本政府は、輸入関税引き上げによって国産タバコを保護することで業界の利益を確保し、ひいては税収アップにつなげることを目論んだことでしょう(保護関税)。しかしながら、輸入タバコから徴収できる関税も、政府にとっては重要な財源です(財政関税)。関税を上げることは当然、自国の産業を保護することになります。しかし、高すぎる関税を嫌って、外国企業が日本市場を避けてしまっては元も子もありません。それでは関税収入が減少してしまいます。そのため、関税政策は、重要な政治的争点として浮上することもあります。

 ドイツ製タバコであることに着目すると、次のような問題があります。第一次世界大戦に敗北したドイツは、1919年のヴェルサイユ講和条約で片務的な通商待遇を1925年まで課せられていました。その中には、ドイツ自身で関税の決定ができない協定関税の制度も含まれていました。そのため、1920年代半ばのドイツは、日本を含めた戦勝各国との来るべき通商協定の改正に向けて着々と準備していました。この日独通商交渉の文脈でタバコ関税がどのように扱われたのか、気になるところです。

 こうしてみると、専売局証票は、近代日本における戦時経済や、先進工業国との厳しい通商交渉といったドラマの痕跡といえそうです。もしかすると上掲の証票に記載された「弐拾五本入 定価七拾銭」の決定には、並々ならぬ苦心が秘めれているのかもしれません。

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小野坂


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