1978年の千葉県農業農民友好訪中団に活動報告、『再見、新生中国』を紹介します

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 いつもくまねこ堂ブログをご覧いただきありがとうございます。今回は、最近の買取で接した、興味深い文献を紹介していきます。

 ご依頼くださったのは、中国残留孤児を支援していた、ある団体の方です。その買取にて、1970-1980年代の日中関係に関する冊子、図録、地図などをお譲りいただきました。ありがとうございます。

 その中より今回は、1978年の千葉県農業農民友好訪中団に活動報告である、『再見、新生中国』という冊子を紹介します。なぜ、戦時中の中国に日本人が大勢存在し、そして「残留」することになったのか。そして戦後は、農業団体は何を目的として活動していたのでしょうか。そうした点を念頭に置きつつ、以下、『再見、新生中国』に再会してみようと思います。

千葉県農業農民友好訪中団

 まず、中国残留孤児について基本事項を確認していきましょう。それは、「第2次大戦後,中国に残された日本人孤児のこと」を指します。コトバンク(https://bit.ly/3aTv8ji)によれば、「孤児のほとんどは,日本が満州(中国東北地区)を支配した時期の満蒙開拓移民や軍人の子供」と記載されているように、残留孤児が発生した原因が、日本政府の満州移民政策にあったことは明らかです。そうした事情については、近年の研究において(※)、次のように簡潔に記されています。

 「なぜ日本人が満洲にわたったのかを知る必要がある。……一九二九年の世界恐慌によって日本社会は深刻な不況に陥っていた。最大の輸出品であった生糸は前近代的家族経営に依存するという脆弱な構造であったため、農村が大打撃を受けることとなった。政治による農村の救済が滞るなか。一九三一年に満洲事変が勃発する。閉塞感を破る『戦果』の報道は人々を熱狂させることとなる。それまでも移民政策は進められていたが。より全国的に拡大していく。一九三七年になると満洲移民政策として『満洲農業移民百万戸移住計画』が国策として始まった」

 これだけでも、なぜ多くの日本人が中国に「残留」することになったのか、ということへの一定の答えになるかもしれません。しかし、農業移民ではない、軍事目的の満州移住もありました。1938年以降の「満蒙開拓青少年義勇軍」という、有事の際の兵員補充のための16-19歳男子の満州移民が、それにあたります。開拓団、義勇兵いずれも送出人数のノルマが厳しく課せられており、強制的な移住ともいうべき事態も生じていたといいます。

中国残留孤児

 そうまでして満州に移住させた人々を、日本軍はどのように扱ったのでしょうか。驚くべきことに、単に放置したのです。1945年8月9日のソ連の満州侵攻に際して日本軍は、満州北部を捨てて南に後退していきました。実はそうした軍人の引き揚げは、満州に移住した開拓団には知らされていなかったのです。残された開拓団、そして有事を想定して配置された義勇兵は、ソ連軍の攻撃を一方的に受けてしまいます。こうした混乱の中で、一家が四散することになり、4000人と推計される人々が中国残留孤児となったのです。

(※)艮香織「中国残留孤児と日本における人権擁護」浅井春夫、水野喜代志『戦争孤児たちの戦後史3 東日本・満洲編』(吉川弘文館、2021年)第3章。

 この悲劇の原因は、元はといえば、日本の経済および軍事の分野での構造的な弱さ、そして政府の想像を絶する無責任さといった点にあります。このことを歴史の教訓ととらえるなら、戦後に農業を通じた日中友好が日本の農業団体によって目指されたことは、過去の悲劇と責任に向き合い、そして未来にも目を向けた重要な活動であったのではないでしょうか。

千葉県農業農民友好訪中団

 そうした観点で『再見、新生中国』にあたってみましょう。同書には、千葉県農業農民友好訪中団の団長、小山小太郎が訪中の目的について述べた文章があります。小山は、「日本の減反政策など農民切り捨て政策にあえいでいる私達」日本人が、中国の農業にいかに学ぶか、という切実な訴えとともに、次のように述べています。

千葉県農業農民友好訪中団

 「われわれは、いま激動する中国情勢のなかにあって、社会主義中国を正しく認識することは、これからの日本の進路と深くかかわりをもっている。そして過去の歴史の過ちを二度と繰り返さないためにも、今回の訪中は大きな役割を果したものと確信している」

 いま一度、食糧価格の高騰が不安視される現在だからこそ、戦前の日本の農業政策、軍事政策に存在した問題点や、戦後における農業を通じた日中友好の歴史を振り返る必要があるのではないでしょうか。

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小野坂


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