リディア・ライマー、グスターフ・ヘーゲルマン、ヴィリー・ユング『戦時下ドイツの国民生活指導』尾高豊作編、伊藤政文訳(刀江書院、1941年)が入荷しました!

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 最近、こんな本が入荷しました。昭和の戦時中の本ですが、同時期のナチス・ドイツの国民生活に関する政策を扱ったドイツ語の本の翻訳になります。

尾高豊作『戦時下ドイツの国民生活指導』

リディア・ライマー、グスターフ・ヘーゲルマン、ヴィリー・ユング『戦時下ドイツの国民生活指導』尾高豊作編、伊藤政文訳(刀江書院、1941年)です。本書「はしがき」は編者の尾高によるものです。ここで尾高は、刊行の目的について述べる際に、戦時下の日本では軍需生産の拡大に性急なあまり、国民の社会生活が軽視されているのではないか、との問いかけから始めています。戦時日本の「国策」から、こともあろうに「国民の社会生活」が抜け落ちていやしないか? という切実さが、この尾高の問いからうかがえます。とりわけ、「徒らに政府当路の掛け声に便乗して国民はただ『戦争だから我慢しよう』という消極的努力にのみ相牽制し合っていたことはなかっただろうか」と尾高が述べるとき、現在の私たちの政治状況、生活環境をある意味表現している気がしなくもないですね。「国策」の名の下に国民に我慢を強いる政府、という構図は、昭和の戦争でも、令和のコロナ禍でも似通っているようです。

 一方で、尾高豊作が望んだような、消極的努力に取って代わる積極的な努力は、老若男女問わず「戦時下の国民として百パーセントの能力を発揮して共同の使命に参画する勇気と責任感を持」つことによってなし得るもののようです。国民に消極的努力を押し付ける政府は問題があるとしても、尾高のいうところの積極的な努力を追い求めることにも危うさが感じられます。事実、戦時日本においては、女性運動、キリスト教運動、社会主義運動など反戦運動・民主化運動につながりそうな運動がことごとく戦時協力へと踏み切る積極性をみせてしまいました。消極的努力を強いることはどのような問題を生み出してしまうのだろうか?、積極さが自由な意思を伴っているとは限らないのでは?という歴史の教訓は、コロナ禍の真っ只中だからこそ再訪する必要があるのかもしれません。

 ところで、『戦時下ドイツの国民生活指導』の版元の刀江書院とは、尾高豊作が設立した出版社です。刀江書院は1919(大正8)年に尾高によって創業され、民俗、歴史、経済、教育、社会学などの多くの専門書を刊行し、また雑誌『郷土』や『児童』を創刊するなど、戦前の人文社会系の出版社として知られています。なお、1997年に児童文庫が刊行されたことが、国会図書館サーチで確認可能です。刀江書院は、少なくともこの時期までは存在していたといえるでしょう。

 「尾高」、「刀江書院」というキーワードで連想したのは、1920年代末からの京城帝国大学における法学、経済学の成果を続々刊行していたのが、刀江書院ではなかったか、ということでした。

京城帝国大学 朝鮮経済の研究

尾高朝雄

 たしかに事務所には、京城帝国大学法文学会『朝鮮経済の研究』(刀江書院、1929年)があります。その目次を確認すると、別の京城帝大の論集(1928年)に尾高朝雄「法律の社会的構造」という論文が所収されていることがわかりました。尾高朝雄は京城帝大法学部教授なのですが、刀江書院の創設者・尾高豊作の弟でもあります。この辺りの出版史事情も、古本屋として今後注目していきたいです。

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