戦前の内容見本が入荷しました
今回も戦前の紙物のご紹介です。
『日本動物図鑑』は北隆館が大正期に出版したものですが、こちらはその内容見本になります。
「内容見本」という言葉、僕は知りませんでしたが、本の宣伝のための、その名の通り「内容の見本」とのことです。
どこか既視感があると思ったら、本屋の漫画コーナーで試し読みできるよう、こんなように冊子になっているものがありました。
しかしこの冊子は出張買取でお譲りいただいたものですので、あるいは配っていたのかもしれません。
当時は本は高価ですし、この本は作りからして同様にある程度のお金をかけられて作られたものだったと思われます。大事な買い物のために手の込んだこの内容見本が作られたのでしょう。
では早速中身の方も見ていきましょう。
3段落目を抜粋します。
載録類数正に四千種、大なるは鯨、小なるはアメーバに至るまで海産陸産を問わずあらゆる動物を列挙して一種毎に挿絵対照の解説を付せる文献の上梓は本邦否全世界に於いて本書を以て真に其の嚆矢たりと言うも些の誇称ではない。
すごい自信でございます。なんだかテンションが上がって参りました。
後半は読点も打たず、畳みかけるような勢いにやられます。
まずは挨拶程度の爬虫類でしょうか。
パラフィン紙に動物の名前が印字してあります。
ひらりとめくると動物たちの姿をより鮮やかに楽しめます。
図鑑的に名前を知るという楽しみ方の他にも、子細に描かれたこの絵自体を、文字情報を除いて楽しむことができます。
図鑑と言うのはこうして改めて見ると楽しいものです。
固有名詞を覚えるのになぜか抵抗があるのですが、なんだか彼らはみんな良い名前でついつい覚えたくなってしまいます。子供の頃はあまり図鑑を楽しんだ記憶はありませんが、作りが良く心温まるこんな図鑑だったら今からでも楽しめそうです。
「そへことば」なるものがございました。読んでみましょう。
博物分類学の泰斗と云われる「リンネ―」が嘗て書いたものの中に「名を知らねば、物が覚えられぬ」という文句がある。
こちらもまた良い一文というか、端的ながら説得力のある言葉です。
読み進めていきましょう。
日付を確認すると大正十五年十一月とあります。
凡例の一つ目で「日本」動物図鑑であることが定義されています。
いよいよ本文に入ります。記念すべき一番はさる、そしてうさぎこうもりと続きます。
うさぎこうもり。
そして4番がきびたき。聞いたことがありません。鳥の名前はなんだかイメージが湧きにくいというか、かなり難易度が高いです。
考えてみれば意外とあまりちゃんと見たこともなかったのかもしれません。
あとと云わず―今直ぐ―一刻も早く申し込まれよ。
マーケティングの発展により、複雑になった現代の広告たちにぜひ見習って欲しい真っすぐな一文です。
もう少したっぷりとご紹介できれば良かったのですが、そうもいきませんのが残念です。
最後になりますが、こちら別冊付録なるものがついています。
本家とどういう分け方なのかは分かりませんが、なんだか「別冊」らしいこのお二方です。
どちらも忙しい人間界のことなどいざ知らず、といった表情ですね。
立春も過ぎ最近は暖かくなってまいりました。
先日世田谷のあたりを散歩していましたが、たまたま羽根木公園を通りかかりました。そこは梅の名所ということで、高台で景色も良く、咲き始めの梅を楽しめました。
日曜日の昼間だったので家族連れやカップルも多く、とても春らしさが感じられました。
お宅のご整理などにも良い時期が近づいているように思います。
内容見本だけでなく戦前のカタログなど、紙ものがあって片付かないという方は、ぜひくまねこ堂にお任せいただければと思います。
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小野