「S.I.C アーティスト・スペシャル・バージョン・キカイダー」が入荷しました~寂しい、自分をはるかに超える戦闘力を持つキカイダーをつくろう?!
いつもくまねこ堂ブログをご覧いただきありがとうございます。
出品に備えて玩具を整理していたところ、ふと人工知能(Artificial Intelligence, AI)の発展について、AIが人間の手を一切借りずにAIを生み出すようになるのだろうか、ということが頭に浮かんできました(※)。そうなるとそれらは、もはや人間の手を離れているので「人工(Artificial)」ではないのですが、そうした存在に対して人間はどのように向き合っていくことになるのでしょうか。
(※)とりあえず、次のような記事があります。「シンギュラリティとは?意味やいつ起こるのかを解説!2025年にはAIに代替されるのか」(識学総研、2023年3月30日)。この記事では、「人工知能が自分より賢い人工知能を生み出すのが2045年」だという説が紹介されています。
https://souken.shikigaku.jp/12894/
AIをめぐる議論は、往々にしてサイエンス・フィクション(SF)が先取りしているものです。実際、AIについての専門書を読んだ際に、SF作品への論及に出くわすことがあります(※)。
(※)そのような作品、作家の例として、スタニスワフ・レム『泰平ヨンの航星日記』を挙げておきます。「1950年代のSF作品と私たちの時代~スタニスワフ・レム『泰平ヨンの航星日記』を紹介します」(くまねこ堂古書ブログ、2022年1月24日)https://www.kumanekodou.com/28520/
そこで、AIがAIを生み出した物語について、最近入荷したフィギュアにふれつつ紹介していきます。
上掲のアンドロイドは「S.I.C アーティスト・スペシャル・バージョン・キカイダー」です。『人造人間キカイダー』は石ノ森章太郎原作の作品ですが、超合金フィギュアシリーズのS.I.C (Super Imaginative Chogokin)には独自の物語、「キカイダーOO(ダブルオー)」が存在します。とはいえ、パッケージ裏の文章を読んでも、キカイダーOOの製作者が誰なのか明記されてはいません。ただし原作作品には次のような設定があるようです。キカイダーOOは、キカイダー・ジローが「『話相手が欲しくて』、また戦闘向きでない自身の優しさをフォローするため」に造られた個体だというのです。キカイダーOO誕生の直接的な理由は、キカイダー・ジローがキカイダー01(イチロー)を失って寂しがっていた、という事情にあります。しかしながら「話相手」にとどまらず「戦闘向きでない自身の優しさをフォローするため」強大な戦闘力を持つキカイダーOOを発明、製造しようと思ったキカイダー・ジローの動機はどのように考えるべきでしょうか。
※キカイダーOO
https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%AD%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%BC00
これこそまさに、AIが自分以上のAIを生み出したストーリーといえるかもしれません。ジローが戦闘向きでないので、自身の短所を補う性能を持つキカイダーOOを望んだというのならば筋が通っていなくもありませんが、人間ならそんな代物を生み出すことにためらいを覚えそうなものです。「待てよ、大丈夫かコレ」と立ち止まるところに、「制御」のきっかけは存在します。しかしながら哀しみにくれるジローには、そんなためらいはなかったようです。こうしてAIが自分以上のAIを生み出す展開にひとたび入ってしまえば、たちまち「人工(Artificial)」を離れて、AI工とでもいう段階に達します。
さて、このキカイダー3兄弟は、心臓の形をした「良心回路」という部位を有しています。フィギュアの説明によれば、これは脱着可能だとのことです。実際、パッケージ裏のS.I.Cストーリーは、「良心回路」なしでキカイダーOOがある場所で転送されるところから始まっています。そこからどのような物語が待ち受けているのか、飛び出した心臓と、もげたカマキリ型機械の頭部を眺めつつ考えてみてはいかがでしょうか。
小野坂