追加情報! 1919~1920年頃の似島(にのしま)のドイツ人俘虜収容所資料をお譲りいただきました!

 以前、東京都世田谷区にて、1919~1920年頃の似島(にのしま)のドイツ人俘虜収容所資料をお譲りいただきましたことをお伝えしました(※)。今回は、その中の史料につきまして、追加情報をアップいたします。

※東京都世田谷区にて、1919~1920年頃の似島のドイツ人俘虜収容所資料をお譲り頂きました。(くまねこ堂骨董ブログ、2015年12月5日)
https://www.kumaneko-antique.com/5354/

※海軍関係者の肖像:東京都世田谷区にて、1919~1920年頃の似島のドイツ人俘虜収容所写真アルバムをお譲り頂きました。(くまねこ堂骨董ブログ、2015年11月27日)
https://www.kumaneko-antique.com/5300/

 似島とは、広島湾内の島です。もともとは、陸軍第ニ消毒所でした。ドイツ人俘虜を収容する施設ですので、集団感染への対処などを考慮してこの地が選ばれたものと思われます。当時の状況といえば、第一次世界大戦において、日本はドイツ権益のあった中国の青島を占領するなど、ドイツと交戦状態にありました。この交戦状態は、第一次世界大戦の講和条約である1919年6月のヴェルサイユ条約の締結をもって終結しました。

 また、先に「集団感染への対処」と述べましたが、当時は世界的にインフルエンザの流行が発生しており、日本では1919年~20年の冬、罹患者は2300 万人、死者は38万人におよんだとされています。ちょうど100年前ということもあり、タイムリーな話題かと思い、この度取り上げたました次第です。

 今回画像とともに紹介するのは、「検閲部用」として配布された、「俘虜連名簿 似島俘虜収容所」という冊子です。

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 以下の画像はその中の一部です。興味深いことに、ドイツ人俘虜たちの従軍前の職種が記載されています。造船技師、坑道機械技師、青島高等学校教官、農業、屠殺業、美術建物金具業、貿易商、植民地官吏、警察官など様々な前職が記録されています。ここからは、戦争はあらゆる立場の人々を巻き込んでいく様子がうかがえます。

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 こうした様々な背景を持つ俘虜たちの存在は、日本社会に影響を与えることになります。というのも、1919年3月に広島県物産陳列館(現原爆ドーム)で「似島独逸俘虜技術工芸品展覧会」が開催され、ドイツ発祥の技術や文化が紹介されたからです。とくに有名なのはバウムクーヘンでしょうか(※)。

※瀬戸武彦『青島から来た兵士たち―第一次世界大戦とドイツ兵俘虜の実像―』(同学社、2008年)103-104頁。

 ところで、同じくお譲りいただいた史料から、これまた気になるものが含まれておりました。それは、1936年12月15日現在のものと記載がある、「東京 独逸染料合名会社」の「住所録」です。実は「染料」も第一次世界大戦の頃の日独関係のキーワードのひとつです。日本は青島にあったドイツ権益を接収することで、染料生産に欠かせない石炭工学などの技術も獲得しました。それは、敵国の特許である技術を利用する形で進められました。この件は、似島が元は陸軍の施設で、広島という海軍のお膝元であるということも、もしかしたらつながりがあるかもしれません。石炭から染料に用いる化学物質を作り出す際に、その工程で火薬の原料となるトリニトロトルエンや、痛み止めのアスピリンが取り出せるからです。火薬と痛み止めが軍隊に必須であることは言うまでもないでしょう。

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 独逸染料合名会社とは、1924年に設立された、「バーレンス継続社バイエル合名会社、カーレ合名会社、□信洋行、共同染料会社の五社」によるトラストで、当時は染料販売の過当競争の弊害を是正するものとして好意的に受け止められていたようです(※)。

※「独逸染料販売合同 独逸染料合名会社成る」大阪時事新報 1924.11.27 (大正13)
神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫 染料工業(02-149)
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/ContentViewM.jsp?METAID=00058376&TYPE=HTML_FILE&POS=1

 このように、第一次世界大戦の日独戦争をきっかけに、バウムクーヘンから化学薬品、火薬といった、その後の日本に大きな影響を与えた技術が入ってきました。似島収容所と染料会社の文献を同時にお譲りいただくことになったのも、偶然とは言い切れないのです。このような貴重なご史料をお譲りいただいたこと、感謝申し上げます。

 もしご自宅で、「これは?!」という古い記録が出てまいりましたら、お電話またはメールフォーム、LINEにて、お気軽にお問い合わせ下さいませ。スタッフ一同心よりお待ちしております。

小野坂


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