(その3)昭和戦前・戦時期の工芸品に関する輸出の奨励やデザインの研究に関する雑誌・公的機関の報告書などが大量入荷しました~ある情報部門の海軍軍人の『工業奨励』寄稿にみる「戦時日本」の雰囲気

 先日は、品川区八潮のお宅へ買取りでうかがいました!
 万年筆、ライター、腕時計、海外紙幣・コイン、ギター、ソフビの赤ちゃん人形、世界の名著、古本(戦記)などをお譲りいただきました、ありがとうございます!
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 最近入荷しました、昭和戦前・戦時期の工芸品に関する輸出の奨励やデザインの研究に関する雑誌につきまして随時、このくまねこ堂ブログにアップしてきました。今回は3回目になります。

 初回は、1926年(大正15年~昭和元年)に設立された産業デザインの振興団体の帝国工芸会を手がかりに、当時の国際情勢もあわせて、買取品の一部を紹介しました。2回目は、1939年8月、商工業振興機関の東京府立工業奨励館が、『工業奨励』という機関誌を創刊したことを取り上げ、この機関誌が日中戦争期に発行されていたことの意味について見ていきました。ここではとくに、創刊号の「工芸部の使命」という論考に着目しています。

※昭和戦前・戦時期の工芸品に関する輸出の奨励やデザインの研究に関する雑誌・公的機関の報告書などが大量入荷しました~芸術と経済政策の交点(くまねこ堂骨董ブログ、2020年9月24日)
https://www.kumaneko-antique.com/16768/

(続)昭和戦前・戦時期の工芸品に関する輸出の奨励やデザインの研究に関する雑誌・公的機関の報告書などが大量入荷しました~日中戦争期における工芸品の使命とは⁉(くまねこ堂骨董ブログ、2020年9月26日)
https://www.kumaneko-antique.com/16778/

 3回目の今回は、戦時色がますます濃くなる『工業奨励』の内容についてふれていきます。まずは、1941年6月発行の第7号の表紙からです。どんな記事が採録されているのでしょうか。

工業奨励
工業奨励

 今回は、「国防国家と国民生活」を取り上げます。該当記事の著者は、情報局第二部第二課長の海軍大佐・大熊譲です。情報局とは1940年12月に発足した内閣直属の機関で、内閣情報部と外務省情報部、陸軍省情報部、海軍省軍事普及部、内務省警保局検閲課、逓信省電務局電務課の事務の統合をはかる目的で設置されました。したがって、この情報局はどこかの省庁の一部局ではありません。要するに戦時下での国策宣伝を目的にした新設の省庁横断的な統合機関ということです。

 そのような情報部の課長である大熊はこの記事で、物資の少ない国が長期戦を戦うにあたっての、日本人の国民性の短所について述べています。「短期、焦燥、飽き易い、感情にはしり易い、デマや暗示にかゝり易いかういう点。これは特に直さねばならぬ」というのです。続けて大熊は、宮本武蔵と佐々木小次郎との巌流島の決闘の講釈に突入しています。この部分は、なんと巌流島の決闘を例えにして、近代の自由主義・個人主義を批判しているのです。これは、なぜこんな話になるのか、いささか戸惑われた方も多いでしょう。

 しかし、この点に、「戦時日本」という時代の雰囲気が隠されています。長期の総力戦を戦おうとする日本では経済官僚や軍の中堅層を中心に、近代の自由主義・個人主義を克服すべきものとみなす、社会主義の影響を強く受けた計画経済の思想が受け入れられていました。こちらは近代の次の時代を求めた革新的な動きといえるでしょう。しかしながら、その一方でこの時期の近代批判には、武士道や戦国大名の駆け引きのごとく前近代的な価値を称揚する復古的な方向性も存在していました。そして、これら両者のキメラである「復古革新」あるいは「革新右翼」という勢力は、この時代の政治を大きく左右しました(※)。

(※)この点については、とりあえず、緒方貞子『満州事変――政策の形成過程』 (岩波現代文庫、2011年)

 このように見てみると、今回取り上げた大熊譲の突飛な巌流島講釈も、当時の雰囲気の一部であったことがわかります。『工業奨励』は基本的には、工芸品に関する輸出の奨励やデザインの研究の雑誌なのですが、こうした戦時色濃厚な記事も時折出現します。

 なお、くまねこ堂ブログで紹介した以外の号も入荷しておりますので、お電話またはメールフォーム、LINEにて、お気軽にお問い合わせ下さいませ。第12号(1944年3月)か国立国会図書館にも所蔵がないようです。

※国立国会図書館サーチ キーワード「工業奨励」
https://bit.ly/3j0ir4Z

 第12号の目次は下記の画像を参照ください(※現物の目次はなぜか第11号と記載されています)。

工業奨励

 スタッフ一同、心よりお待ちしております。

小野坂


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